最一小判 平成27年2月19日 「特ニ有利ナル発行価額」の意義

判決(決定)の概要・要旨

  • 非上場会社の株価の算定については、簿価純資産法、時価純資産法、配当還元法、収益還元法、DCF法、類似会社比準法などの評価手法が存在しているが、どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されているというわけではない。
  • 非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないとした事例。

基本情報

裁判年月日 平成27年2月19日
裁判所 最高裁判所 第一小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原判決中上告人ら敗訴部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
  • 前項の部分に関する被上告人の請求をいずれも棄却する。
  • 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
担当裁判官 山浦善樹 櫻井龍子 金築誠志 白木勇
意見
事件番号 平成25年(受)第1080号
事件名 損害賠償請求事件
原審裁判所 東京高等裁判所
原審事件番号 平成24年(ネ)第2826号
原審裁判年月日 平成25年1月30日

最一小判平成27年2月19日(裁判所ホームページ)

関係法令等

商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)

  • 第280条ノ2 会社ノ成立後株式ヲ発行スル場合ニ於テハ左ノ事項ニシテ定款ニ定ナキモノハ取締役会之ヲ決ス但シ本法ニ別段ノ定アルトキ又ハ定款ヲ以テ株主総会ガ之ヲ決スル旨ヲ定メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
    • 一 新株ノ種類及数
    • li>二 新株ノ発行価額及払込期日
    • 三 現物出資ヲ為ス者ノ氏名、出資ノ目的タル財産、其ノ価格並ニ之ニ対シテ与フル株式ノ種類及数
    • 四 新株ノ発行価額中資本ニ組入レザル額
    • 五 株主ニ新株ノ引受権ヲ与フル旨並ニ引受権ノ目的タル株式ノ種類、数及発行価額
    • 六 前号ノ引受権ヲ譲渡スコトヲ得ベキコト
    • 七 株主ノ請求アルトキニ限リ新株引受権証書ヲ発行スベキコト及其ノ請求ヲ為スコトヲ得ベキ期間
    • 八 株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキモノ並ニ之ニ対シ発行スル株式ノ種類、数及発行価額
    • 九 株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テ第二百八十条ノ五ノ二第一項但書ノ決議アルトキハ新株ノ割当ヲ受クル者並ニ之ニ対シ割当ツル株式ノ種類及数
  • 2 株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スルニハ定款ニ之ニ関スル定アルトキト雖モ其ノ者ニ対シ発行スルコトヲ得ベキ株式ノ種類、数及最低発行価額ニ付第三百四十三条ニ定ムル決議アルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス
  • 3 前項ノ場合ニ於ケル議案ノ要領ハ第二百三十二条ニ定ムル通知ニ之ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
  • 4 第二項ノ決議ハ決議ノ日ヨリ一年内ニ払込ヲ為スベキ新株ニ付テノミ其ノ効力ヲ有ス
  • 5 市場価格アル株式ヲ公正ナル価額ニテ発行スル場合ニ於テハ第一項第二号ノ発行価額ニ付テハ其ノ決定ノ方法ヲ定ムルヲ以テ足ル

会社法
(募集事項の決定)

  • 第199条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
    • 一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
    • 二 募集株式の払込金額(募集株式1株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
    • 三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
    • 四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
    • 五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
  • 2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
  • 3 第1項第2号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
  • 4 種類株式発行会社において、第1項第1号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
  • 5 募集事項は、第1項の募集ごとに、均等に定めなければならない。

(募集事項の決定の委任)

  • 第200条 前条第2項及び第4項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならない。
  • 2 前項の払込金額の下限が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、同項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
  • 3 第1項の決議は、前条第1項第4号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の末日)が当該決議の日から1年以内の日である同項の募集についてのみその効力を有する。
  • 4 種類株式発行会社において、第1項の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定の委任は、当該種類の株式について前条第4項の定款の定めがある場合を除き、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。