最一小判 平成26年1月20日 少年法20条の趣旨と逆送された少年事件の起訴

2014年11月26日

判決(決定)の概要・要旨

  • 故意による通行禁止違反の事実(法定刑:懲役刑又は罰金刑)で家庭裁判所からの送致を受けた検察官は、少年法20条1項の趣旨に照らし、事実の同一性が認められるからといって、過失による通行禁止違反の事実(法定刑:罰金刑のみ)で公訴を提起することが許されない。

ひとくちメモ

  • 少年事件の場合、警察・検察による捜査の結果、犯罪の嫌疑があると思慮されるときは、家庭裁判所に送致されます。(少年法41条、42条)
  • 家庭裁判所が調査を行った後、死刑、懲役又は禁固にあたる罪の事件について、刑事処分が相当と認められるときは、家庭裁判所が決定で、検察官に少年を送致します。(逆送致、逆送)【法定刑が罰金刑、拘留、科料しかない罪については、逆送されることはありません。】
  • 検察官は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起(起訴)しなければならないとされています。
  • ただし、送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないとき等、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでないとされており、この場合、検察官は、再び少年を家庭裁判所に送致しなければなりません。(少年法42条)

基本情報

裁判年月日 平成26年1月20日
裁判所 最高裁判所 第一小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原略式命令を破棄する。
  • 被告人が普通乗用自動車を運転して過失により通行禁止場所を通行したとの事実につき公訴を棄却する。
  • 被告人を罰金20万円に処する。
担当裁判官 横田尤孝、櫻井龍子、金築誠志、白木勇、山浦善樹
補足意見・反対意見等 補足意見(木内道祥)、意見(寺田逸郎)、反対意見(大橋正春)
事件番号 平成25年(さ)第4号
事件名 道路交通法違反被告事件に係る略式命令に対する非常上告事件
原審裁判所 伊勢崎簡易裁判所
原審事件番号 平成25年(い)第1028号
原審裁判年月日 平成25年4月9日

最三小判平成26年1月14日(裁判所ホームページ)

関係法令等

少年法
(検察官への送致)

  • 20条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

道路交通法
(無免許運転等の禁止)

  • 第64条 何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項又は同条第三項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。

(平成25年法律第43号による改正前の道路交通法)

  • 第117条の4 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
    • 一 (略)
    • 二 法令の規定による運転の免許を受けている者(第百七条の二の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第八十八条第一項第二号から第四号までのいずれかに該当している場合、又は本邦に上陸した日から起算して滞在期間が一年を超えている場合を含む。)運転した者
  • 第119条  次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
    • 一 (略)
    • 一の二 第7条(信号機の信号等に従う義務)、第8条(通行の禁止等)第1項又は第9条(歩行者用道路を通行する車両の義務)の規定に違反した車両等の運転者
  • 2 過失により前項第1号の2、第2号(第43条後段に係る部分を除く。)、第5号、第9号又は第12号の3の罪を犯した者は、10万円以下の罰金に処する。

刑事訴訟法

  • 第463条 前条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
  • 第338条 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
    • 一~三 (略)
    • 四 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。
  • 第458条 非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。
    • 一 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。