最二小判 平成27年6月12日 匿名組合員が受ける利益・損失の所得区分と損益通算の可否

2016年3月15日

判決(決定)の概要・要旨

  • 匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配は、当該契約において、匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており、匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には、当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各種所得に該当し、それ以外の場合には、当該事業の内容にかかわらず、その出資が匿名組合員自身の事業として行われているため事業所得となる場合を除き、雑所得に該当するものと解するのが相当とした事例。
  • 平成17年通達の改正前に旧通達に従ってされた平成15年分及び同16年分の各申告において、本件リース事業につき生じた損失のうち本件匿名組合契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を不動産所得に係る損失に該当するものとして申告し、他の各種所得との損益通算により上記の金額を税額の計算の基礎としていなかったことについて、真に責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお同人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした事例。

基本情報

裁判年月日 平成27年6月12日
裁判所 最高裁判所 第二小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原判決のうち別紙処分目録記載の各処分の取消請求に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
  • 別紙処分目録記載の各処分をいずれも取り消す。
  • 上告人らのその余の上告を棄却する。
  • 訴訟の総費用はこれを10分し,その9を上告人らの負担とし,その余を被上告人の負担とする。
担当裁判官 千葉勝美 小貫芳信 鬼丸かおる 山本庸幸
意見
事件番号 平成24年(行ヒ)第408号
事件名 所得税更正処分取消等請求事件
原審裁判所 東京高等裁判所
原審事件番号 平成22年(行コ)第403号
原審裁判年月日 平成24年7月19日

最二小判平成27年6月12日(裁判所ホームページ)

関係法令等

所得税法
(不動産所得)

  • 第26条 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
  • 2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

(事業所得)

  • 第27条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
  • 2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

(雑所得)

  • 第35条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
  • 2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
    • 一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額
    • 二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額
  • 3 前項に規定する公的年金等とは、次に掲げる年金をいう。
    • 一 第31条第一号及び第二号(退職手当等とみなす一時金)に規定する法律の規定に基づく年金その他同条第一号及び第二号に規定する制度に基づく年金(これに類する給付を含む。第三号において同じ。)で政令で定めるもの
    • 二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金
    • 三 確定給付企業年金法 の規定に基づいて支給を受ける年金(第31条第三号に規定する規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される同法第25条第1項(加入者)に規定する加入者(同項 に規定する加入者であつた者を含む。)の負担した金額がある場合には、その年金の額からその負担した金額のうちその年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額に相当する部分に限る。)その他これに類する年金として政令で定めるもの
  • 4 第2項に規定する公的年金等控除額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。ただし、当該合計額が70万円に満たないときは、70万円とする。
    • 一 50万円
    • 二 その年中の公的年金等の収入金額から前号に掲げる金額を控除した残額の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に掲げる金額
      • イ 当該残額が360万円以下である場合 当該残額の100分の25に相当する金額
      • ロ 当該残額が360万円を超え、720万円以下である場合 90万円と当該残額から360万円を控除した金額の100分の15に相当する金額との合計額
      • ハ 当該残額が720万円を超える場合 144万円と当該残額から720万円を控除した金額の100分の5に相当する金額との合計額

(損益通算)

  • 第69条 総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
  • 2 前項の場合において、同項に規定する損失の金額のうちに第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する資産に係る所得の金額(以下この項において「生活に通常必要でない資産に係る所得の金額」という。)の計算上生じた損失の金額があるときは、当該損失の金額のうち政令で定めるものは政令で定めるところにより他の生活に通常必要でない資産に係る所得の金額から控除するものとし、当該政令で定めるもの以外のもの及び当該控除をしてもなお控除しきれないものは生じなかつたものとみなす。

国税通則法
(過少申告加算税)

  • 第65条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第3項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第1項ただし書又は第6項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
  • 2~3 (略)
  • 4 第1項又は第2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
  • 5 (略)