最二小判 平成27年6月8日 労災保険法の療養補償給付を受ける者について打切補償を支払って解雇することの有効性

2015年8月13日

判決(決定)の概要・要旨

  • 労災保険法12条の8第1項1号の療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には、労働基準法75条による療養補償を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に、使用者は、当該労働者につき、労働基準法81条の規定による打切補償の支払をすることによって、解雇制限の除外事由を定める労働基準法19条1項ただし書の適用を受けることができるとした事例。

基本情報

裁判年月日 平成27年6月8日
裁判所 最高裁判所 第二小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原判決を破棄する。
  • 本件を東京高等裁判所に差し戻す。
担当裁判官 鬼丸かおる 千葉勝美 小貫芳信 山本庸幸
意見
事件番号 平成25年(受)第2430号
事件名 地位確認等請求反訴事件
原審裁判所 東京高等裁判所
原審事件番号 平成24年(ネ)第7172号
原審裁判年月日 平成25年7月10日

最二小判平成27年6月8日(裁判所ホームページ)

関係法令等

労働者災害補償保険法

  • 第12条の8 第7条第1項第一号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
    • 一 療養補償給付
    • 二 休業補償給付
    • 三 障害補償給付
    • 四 遺族補償給付
    • 五 葬祭料
    • 六 傷病補償年金
    • 七 介護補償給付
  • 2 前項の保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、労働基準法第75条から第77条まで、第79条及び第80条に規定する災害補償の事由又は船員法(昭和22年法律第100号)第89条第1項 、第91条第1項、第92条本文、第93条及び第94条に規定する災害補償の事由(同法第91条第1項にあつては、労働基準法第76条第1項に規定する災害補償の事由に相当する部分に限る。)が生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う。
  • 3~4 (略)

労働基準法
(解雇制限)

  • 第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
  • 2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

(療養補償)

  • 第75条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
  • 2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

(打切補償)

  • 第81条 第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。