最三小判 平成27年3月10日 裁判員裁判における区分審理制度の合憲性

2015年4月21日

判決(決定)の概要・要旨

  • 裁判員法71条以下の「区分審理制度」は、区分事件審判及び併合事件審判の全体として公平な裁判所による法と証拠に基づく適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されているといえ、憲法37条1項に違反するものではない。

基本情報

裁判年月日 平成27年3月10日
裁判所 最高裁判所 第三小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 本件上告を棄却する。
  • 当審における未決勾留日数中300日を本刑に算入する。
担当裁判官 大谷剛彦 岡部喜代子 大橋正春 木内道祥 山崎敏充
意見 補足意見(大谷剛彦)
事件番号 平成26年(あ)第755号
事件名 営利誘拐幇助,逮捕監禁幇助,強盗殺人幇助,殺人被告事件
原審裁判所 仙台高等裁判所
原審事件番号 平成24年(う)第18号
原審裁判年月日 平成25年4月25日

最三小判平成27年3月10日(裁判所ホームページ)

関係法令等

日本国憲法

  • 第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
  • 2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
  • 3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
(区分審理決定)

  • 第71条 裁判所は、被告人を同じくする数個の対象事件の弁論を併合した場合又は第4条第1項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において、併合した事件(以下「併合事件」という。)を一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任又は職務の遂行を確保するため特に必要があると認められるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、併合事件の一部を一又は二以上の被告事件ごとに区分し、この区分した一又は二以上の被告事件ごとに、順次、審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができる。ただし、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないと認められるときは、この限りでない。
  • 2 区分審理決定又は前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
  • 3 区分審理決定又は第1項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(部分判決)

  • 第78条 区分事件に含まれる被告事件について、犯罪の証明があったときは、刑事訴訟法第333条及び第334条の規定にかかわらず、部分判決で有罪の言渡しをしなければならない。
  • 2 部分判決で有罪の言渡しをするには、刑事訴訟法第335条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる事項を示さなければならない。
    • 一 罪となるべき事実
    • 二 証拠の標目
    • 三 罰条の適用並びに刑法 (明治40年法律第45号)第54条第1項の規定の適用及びその適用に係る判断
    • 四 法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実に係る判断
    • 五 法律上刑を減免し又は減免することができる理由となる事実に係る判断
  • 3 部分判決で有罪の言渡しをする場合は、次に掲げる事項を示すことができる。
    • 一 犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実
    • 二 没収、追徴及び被害者還付の根拠となる事実並びにこれらに関する規定の適用に係る判断
  • 4 区分事件の審理において第2項第4号又は第5号に規定する事実が主張されたときは、刑事訴訟法第335条第2項の規定にかかわらず、部分判決において、これに対する判断を示さなければならない。
  • 5 第63条の規定は、第1項の規定による部分判決の宣告をする場合について準用する。
  • 第79条 区分事件に含まれる被告事件について、刑事訴訟法第329条の規定による管轄違いの判決、同法第336条の規定による無罪の判決、同法第337条の規定による免訴の判決又は同法第338条の規定による公訴棄却の判決の言渡しをしなければならない事由があるときは、部分判決でその旨の言渡しをしなければならない。

(区分事件審判における裁判員等の任務の終了)

  • 第84条 区分事件審判に係る職務を行う裁判員及び補充裁判員の任務は、第48条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当するときに終了する。
    • 一 当該区分事件について部分判決の宣告をしたとき。
    • 二 当該区分事件に含まれる被告事件の全部について刑事訴訟法第339条第1項の規定による公訴を棄却する決定がされたとき。
    • 三 当該区分事件について第七十四条の決定がされたとき。

(併合事件審判)

  • 第86条 裁判所は、すべての区分事件審判が終わった後、区分事件以外の被告事件の審理及び区分事件の審理(当該区分事件に含まれる被告事件に係る部分判決で示された事項に係るもの(第3項の決定があった場合を除く。)を除く。)並びに併合事件の全体についての裁判(以下「併合事件審判」という。)をしなければならない。
  • 2 裁判所は、前項の規定により併合事件の全体についての裁判をする場合においては、部分判決がされた被告事件に係る当該部分判決で示された事項については、次項の決定があった場合を除き、これによるものとする。
  • 3 裁判所は、構成裁判官の合議により、区分事件の審理又は部分判決について刑事訴訟法第377条各号、第378条各号又は第383条各号に掲げる事由があると認めるときは、職権で、その旨の決定をしなければならない。

(併合事件審判のための公判手続の更新)

  • 第87条 第84条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し、新たに第2条第1項の合議体に併合事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった場合には、第61条第1項の規定にかかわらず、併合事件審判をするのに必要な範囲で、区分事件の公判手続を更新しなければならない。