最三小判 平成27年3月10日 ハズレ馬券の経費算入の可否

2015年4月5日

判決(決定)の概要・要旨

  • 馬券を自動的に購入するソフトを使用して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では、払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たると解される。
  • 「外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金」という費用が「当たり馬券の払戻金」という収入に対応するなどの本件事実関係の下では、外れ馬券の購入代金について当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる。

基本情報

裁判年月日 平成27年3月10日
裁判所 最高裁判所 第三小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 本件上告を棄却する。
担当裁判官 岡部喜代子 大谷剛彦 大橋正春 木内道祥 山崎敏充
意見 意見(大谷剛彦)
事件番号 平成26年(あ)第948号
事件名 所得税法違反被告事件
原審裁判所 大阪高等裁判所
原審事件番号 平成25年(う)第858号
原審裁判年月日 平成26年5月9日

最三小判平成27年3月10日(裁判所ホームページ)

関係法令等

所得税法
(一時所得)

  • 第34条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
  • 2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
  • 3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、50万円(同項に規定する残額が50万円に満たない場合には、当該残額)とする。

(雑所得)

  • 第35条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
  • 2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
    • 一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額
    • 二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額
  • 3 前項に規定する公的年金等とは、次に掲げる年金をいう。
    • 一 第31条第1号及び第2号(退職手当等とみなす一時金)に規定する法律の規定に基づく年金その他同条第1号及び第2号に規定する制度に基づく年金(これに類する給付を含む。第3号において同じ。)で政令で定めるもの
    • 二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金
    • 三 確定給付企業年金法 の規定に基づいて支給を受ける年金(第31条第3号に規定する規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される同法第25条第1項(加入者)に規定する加入者(同項に規定する加入者であつた者を含む。)の負担した金額がある場合には、その年金の額からその負担した金額のうちその年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額に相当する部分に限る。)その他これに類する年金として政令で定めるもの
  • 4 第項に規定する公的年金等控除額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。ただし、当該合計額が70万円に満たないときは、70万円とする。
    • 一 50万円
    • 二 その年中の公的年金等の収入金額から前号に掲げる金額を控除した残額の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に掲げる金額
      • イ 当該残額が360万円以下である場合 当該残額の100分の25に相当する金額
      • ロ 当該残額が360万円を超え、720万円以下である場合 90万円と当該残額から360万円を控除した金額の100分の15に相当する金額との合計額
      • ハ 当該残額が720万円を超える場合 144万円と当該残額から720万円を控除した金額の100分の5に相当する金額との合計額

(必要経費)

  • 第37条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第35条第3項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
  • 2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

(家事関連費等の必要経費不算入等)

  • 第45条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
    • 一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
    • 二 所得税(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付する第131条第3項(確定申告税額の延納に係る利子税)又は第136条(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)の規定による利子税で、その事業についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるものを除く。)
    • 三 所得税以外の国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法 (昭和42年法律第23号)の規定による過怠税
    • 四 地方税法(昭和25年法律第226号)の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及び特別区民税を含む。)
    • 五 地方税法 の規定による延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金
    • 六 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
    • 七 損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの
    • 八 国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)の規定による課徴金及び延滞金
    • 九 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
    • 十 金融商品取引法第6章の2(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
    • 十一 公認会計士法(昭和23年法律第103号)の規定による課徴金及び延滞金
  • 2 居住者が供与をする刑法(明治40年法律第45号)第198条(贈賄)に規定する賄賂又は不正競争防止法(平成5年法律第47号)第18条第1項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭の額及び金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額(その供与に要する費用の額がある場合には、その費用の額を加算した金額)は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
  • 3 第1項第2号から第7号までに掲げるものの額又は前項に規定する金銭の額及び金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の価額は、第1項又は前項の居住者の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しない。