最一小判 平成27年2月26日 セクハラによる懲戒処分の相当性

2015年3月4日

判決(決定)の概要・要旨

  • 本件事案のもとでは、被上告人(被懲戒者)らが過去に懲戒処分を受けたことがなく、出勤停止処分の結果として相応の給与上の不利益を伴うものであったこと等を考慮したとしても、出勤停止処分が懲戒処分として重きに失し、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえないから、懲戒権を濫用したものとはいえないとされた事例。
  • 具体的なセクハラ行為については、下記参照

ひとくちメモ

本件で認定されたセクハラ行為(判決書の別紙より)

被上告人X1の行為一覧

  • 被上告人X1は、平成23年、従業員Aが精算室において1人で勤務している際、同人に対し、複数回、自らの不貞相手と称する女性(以下、単に「不貞相手」という。)の年齢(20代や30代)や職業(主婦や看護師等)の話をし、不貞相手とその夫との間の性生活の話をした。
  • 被上告人X1は、平成23年秋頃、従業員Aが精算室において1人で勤務している際、同人に対し、「俺のん、でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ。」と言った。
  • 被上告人X1は、平成23年、従業員Aが精算室において1人で勤務している際、同人に対し、複数回、「夫婦間はもう何年もセックスレスやねん。」、「でも俺の性欲は年々増すねん。なんでやろうな。」、「でも家庭サービスはきちんとやってるねん。切替えはしてるから。」と言った。
  • 被上告人X1は、平成23年12月下旬、従業員Aが精算室において1人で勤務している際、同人に対し、不貞相手の話をした後、「こんな話をできるのも、あとちょっとやな。寂しくなるわ。」などと言った。
  • 被上告人X1は、平成23年11月頃、従業員Aが精算室において1人で勤務している際、同人に対し、不貞相手が自動車で迎えに来ていたという話をする中で、「この前、カー何々してん。」と言い、従業員Aに「何々」のところをわざと言わせようとするように話を持ちかけた。
  • 被上告人X1は、平成23年12月、従業員Aに対し、不貞相手からの「旦那にメールを見られた。」との内容の携帯電話のメールを見せた。
  • 被上告人X1は、休憩室において、従業員Aに対し、被上告人X1の不貞相手と推測できる女性の写真をしばしば見せた。
  • 被上告人X1は、従業員Aもいた休憩室において、本件水族館の女性客について、「今日のお母さんよかったわ…。」、「かがんで中見えたんラッキー。」、「好みの人がいたなあ。」などと言った。

被上告人X2の行為一覧

  • 被上告人X2は、平成22年11月、従業員Aに対し、「いくつになったん。」、「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで。」と言った。
  • 被上告人X2は、平成23年7月頃、従業員Aに対し、「30歳は、二十二、三歳の子から見たら、おばさんやで。」、「もうお局さんやで。怖がられてるんちゃうん。」、「精算室に従業員Aさんが来たときは22歳やろ。もう30歳になったんやから、あかんな。」などという発言を繰り返した。
  • 被上告人X2は、平成23年12月下旬、従業員Aに対し、Cもいた精算室内で、「30歳になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから、仕事やめられていいなあ。うらやましいわ。」と言った。
  • 被上告人X2は、平成22年11月以後、従業員Aに対し、「毎月、収入どれくらい。時給いくらなん。社員はもっとあるで。」、「お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。」、「実家に住んでるからそんなん言えるねん、独り暮らしの子は結構やってる。MPのテナントの子もやってるで。チケットブースの子とかもやってる子いてるんちゃう。」などと繰り返し言った。
  • 被上告人X2は、平成23年秋頃、従業員A及び従業員Bに対し、具体的な男性従業員の名前を複数挙げて、「この中で誰か1人と絶対結婚しなあかんとしたら、誰を選ぶ。」、「地球に2人しかいなかったらどうする。」と聞いた。
  • 被上告人X2は、セクハラに関する研修を受けた後、「あんなん言ってたら女の子としゃべられへんよなあ。」、「あんなん言われる奴は女の子に嫌われているんや。」という趣旨の発言をした。

基本情報

裁判年月日 平成27年2月26日
裁判所 最高裁判所 第一小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
  • 前項の部分につき、被上告人らの控訴を棄却する。
  • 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。
担当裁判官 金築誠志 櫻井龍子 白木勇 山浦善樹 池上政幸
意見
事件番号 平成26年(受)第1310号
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
原審裁判所 大阪高等裁判所
原審事件番号 平成25年(ネ)第2860号
原審裁判年月日 平成26年3月28日

最一小判平成27年2月26日(裁判所ホームページ)

関係法令等

労働契約法
(懲戒)

  • 第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。