最一小判 平成26年10月23日 妊娠中の軽易作業への転換と降格処分(マタハラ訴訟)

2014年11月18日

判決(決定)の概要・要旨

  • 女性労働者について、妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として男女雇用機会均等法9条3項の禁止する取扱いに当たる。
  • 労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置につき男女雇用機会均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情(降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることで、円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合など)が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当。

基本情報

裁判年月日 平成26年10月23日
裁判所 最高裁判所 第一小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原判決を破棄する。
  • 本件を広島高等裁判所に差し戻す。
担当裁判官 櫻井龍子 金築誠志 横田尤孝 白木勇 山浦善樹
意見 補足意見(櫻井龍子)
事件番号 平成24年(受)第2231号
事件名 地位確認等請求事件
原審裁判所 広島高等裁判所
原審事件番号 平成24年(ネ)第165号
原審裁判年月日 平成24年7月19日

最一小判平成26年10月23日(裁判所ホームページ)

関係法令等

労働基準法
(産前産後)

  • 第65条 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
  • 2 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
  • 3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
(目的)

  • 第1条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法 の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。

(基本的理念)

  • 第2条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
  • 2 事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従つて、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない。

(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)

  • 第9条 (略)
  • 2 (略)
  • 3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
  • 4 (略)

(指針)

  • 第10条 厚生労働大臣は、第5条から第7条まで及び前条第1項から第3項までの規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
  • 2 第4条第4項及び第5項の規定は指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第4項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則

(妊娠又は出産に関する事由)

  • 第2条の2 法第9条第3項の厚生労働省令で定める妊娠又は出産に関する事由は、次のとおりとする。
    • 一~五 (略)
    • 六 労働基準法第65条第3項の規定による請求をし、又は同項の規定により他の軽易な業務に転換したこと。
    • 七~九 (略)

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(目的)

  • 第1条 この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。

(不利益取扱いの禁止)

  • 第10条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(育児休業等に関する定めの周知等の措置)

  • 第21条 事業主は、育児休業及び介護休業に関して、あらかじめ、次に掲げる事項を定めるとともに、これを労働者に周知させるための措置を講ずるよう努めなければならない。
    • 一 労働者の育児休業及び介護休業中における待遇に関する事項
    • 二 育児休業及び介護休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項
    • 三 前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
  • 2 事業主は、労働者が育児休業申出又は介護休業申出をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対し、前項各号に掲げる事項に関する当該労働者に係る取扱いを明示するよう努めなければならない。

(雇用管理等に関する措置)

  • 第22条 事業主は、育児休業申出及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。