売渡株式等の取得の無効の訴え-会社法第846条の2~第846条の9(新会社法・平成26年改正)

売渡株式等の取得の無効の訴え

売渡株式等の全部の取得の無効は、訴えをもってのみ主張することができます。これは、利害関係者が多数に及ぶ可能性がある株式売渡請求について、法律関係の画一的確定や法的安定性を確保するために、訴訟外での無効主張を制限するものです。

提訴期間

取得日から6か月以内(対象会社が公開会社でない場合には、取得日から1年以内)に訴えを提起しなければなりません。

提訴権者

(1)取得日において売渡株主・売渡新株予約権者であった者
(2)取得日において対象会社の取締役、監査役、執行役であった者
(3)対象会社の取締役・清算人

被告

特別支配株主を被告として訴えを提起しなければなりません。

管轄

対象会社の本店を管轄する地方裁判所に訴えを提起しなければなりません。

弁論の必要的併合

同一の株式等売渡請求について、複数の売渡株主等から別々に無効の訴えが提起された場合、裁判所は、弁論及び裁判を併合してしなければならない。

同じ株式等売渡請求について別々に裁判が進行することで、当事者の主張や手続が重複してなされることを回避し、裁判の結果が矛盾することとならないようにするために、必ず併合しなければならないとされています。

判決の効力

対世効

認容判決(売渡株式等の取得の無効を認める判決)は、第三者にもその効力が及びます。
したがって、訴訟の当事者ではない対象会社や原告になっていない他の売渡株主等についても、売渡株式等の取得が無効となります。

他方、認容判決以外は、第三者にその効果が及ばないため、別の売渡株主が改めて無効の訴えを提起することは妨げられません。

遡及効

認容判決(売渡株式等の取得の無効を認める判決)の効果は、過去にさかのぼらないため、無効とされた売渡株式等の取得は、将来に向かってのみその効力を失います。

条文-会社法第846条の2~846条の9

(売渡株式等の取得の無効の訴え)

  • 第846条の2 株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日(第179条の2第1項第5号に規定する取得日をいう。以下この条において同じ。)から6箇月以内(対象会社が公開会社でない場合にあっては、当該取得日から1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる。
  • 2 前項の訴え(以下この節において「売渡株式等の取得の無効の訴え」という。)は、次に掲げる者に限り、提起することができる。
    • 一 取得日において売渡株主(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求がされた場合にあっては、売渡株主又は売渡新株予約権者。第846条の5第1項において同じ。)であった者
    • 二 取得日において対象会社の取締役(監査役設置会社にあっては取締役又は監査役、指名委員会等設置会社にあっては取締役又は執行役。以下この号において同じ。)であった者又は対象会社の取締役若しくは清算人

(被告)

  • 第846条の3 売渡株式等の取得の無効の訴えについては、特別支配株主を被告とする。

(訴えの管轄)

  • 第846条の4 売渡株式等の取得の無効の訴えは、対象会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

(担保提供命令)

  • 第846条の5 売渡株式等の取得の無効の訴えについては、裁判所は、被告の申立てにより、当該売渡株式等の取得の無効の訴えを提起した売渡株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。ただし、当該売渡株主が対象会社の取締役、監査役、執行役又は清算人であるときは、この限りでない。
  • 2 被告は、前項の申立てをするには、原告の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

(弁論等の必要的併合)

  • 第846条の6 同一の請求を目的とする売渡株式等の取得の無効の訴えに係る訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論及び裁判は、併合してしなければならない。

(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)

  • 第846条の7 売渡株式等の取得の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。

(無効の判決の効力)

  • 第846条の8 売渡株式等の取得の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた売渡株式等の全部の取得は、将来に向かってその効力を失う。

(原告が敗訴した場合の損害賠償責任)

  • 第846条の9 売渡株式等の取得の無効の訴えを提起した原告が敗訴した場合において、原告に悪意又は重大な過失があったときは、原告は、被告に対し、連帯して損害を賠償する責任を負う。