売渡株式等の取得-会社法第179条の9(新会社法・平成26年改正)

売渡株式等の取得

特別支配株主は、取得日に、売渡請求にかかる売渡株式・売渡新株予約権のすべてを取得します。

取得日が到来することにより、特別支配株主は、株式等売渡請求の撤回をすることができなくなります(179条の6第1項)。また、売渡株主等は、売買価格の決定の申立てをすることができなくなります(179条の8第1項)。

譲渡承認の擬制

特別支配株主が取得した売渡株式・売渡新株予約権に譲渡制限がある場合、対象会社は、特別支配株主による売渡株式等の取得を承認したものとみなされます。

譲渡について株式会社の承認を要する旨の定めがある株式(2条17号)・新株予約権(243条2項2号)については、株式会社の承認を得なければ、株式会社に対し、譲渡の効力を主張することができません。

しかしながら、売渡株式等の取得については
(1)特別支配株主が株式等売渡請求をすることについて対象会社が承認していること
(2)売渡請求手続によって特別支配株主が唯一の株主となり、会社支配の維持を考慮する必要がないこと
といった理由で、改めて対象会社の譲渡承認を得る必要もないことから、法律によって承認があったものとみなすとされています。

質権の効果

特別支配株主が株式等売渡請求によって売渡株式等を取得した場合には、売渡株式等を目的とする質権は、売渡株主等が受け取ることができる対価について存在するとされています(151条2項、272条4項)。

これにより、特別支配株主は、質権の設定されていない株式・新株予約権として、売渡株式等を取得することができます。

質権者の権利

登録株式質権者・登録新株予約権質権者は、質権の目的である売渡株式等の対価(金銭)を自ら受け取って、他の債権者に先立って、自己の債権の弁済に充当することができます(154条1項)。

質権者の債権の弁済期がまだ到来していないときは、登録株式質権者・登録新株予約権質権者は、特別支配株主に対し、売渡株式等の対価である金銭相当額を供託させることができます(154条3項)。

条文-会社法第179条の9

(売渡株式等の取得)

  • 第179条の9 株式等売渡請求をした特別支配株主は、取得日に、売渡株式等の全部を取得する。
  • 2 前項の規定により特別支配株主が取得した売渡株式等が譲渡制限株式又は譲渡制限新株予約権(第243条第2項第2号に規定する譲渡制限新株予約権をいう。)であるときは、対象会社は、当該特別支配株主が当該売渡株式等を取得したことについて、第137条第1項又は第263条第1項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。