売買価格の決定の申立て-会社法第179条の8(新会社法・平成26年改正)

売買価格の決定の申立て

売買価格に不服のある売渡株主・売渡新株予約権者は、裁判所に対し、その有する売渡株式・売渡新株予約権の売買価格の決定の申立てをすることができます。

裁判所に公正な価格の決定を求めることで、売渡株主等の利益を保護しようとするものです。

申立てをすることができる者

申立てができるのは、「売渡株主等」とされているので、売渡株主に加え、新株予約権者も申立てをすることができます。

申立てをできる期間

取得日の20日前から取得日の前日までの間に、申立てをしなければなりません。

価格決定の対象となる売渡株式等

対象となる売渡株式等は、申立てをした売渡株主等が有するものに限られます。そのため、申立てをしなかった売渡株主等の有する売渡株式等は、特別支配株主が定め、対象会社が承認した対価の額で売買されることになります。

管轄・審理

売渡株式等に関する売買価格の決定の申立ては、対象会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に申し立てなければなりません(868条2項)。

裁判所は、決定をする場合、審問の期日を開いて、売渡株主等と特別支配株主の陳述を聞かなければなりません(870条2項5号)。

利息の支払い

特別支配株主は、裁判所が決定した売買価格に対する取得日から実際に対価が支払われる日まで、年6%の利息を支払わなければなりません。

対価の仮払い

特別支配株主は、売買価格に関する裁判所の決定があるまでは、売渡株主等に対し、特別支配株主が公正な価格と考える額を仮に支払うことができます。

上記のとおり、特別支配株主は、取得日から支払済みに至るまで、利息の支払義務を負います。裁判所の決定までの期間が長くなれば、その分、特別支配株主が支払う利息の額も増えてしまいます。
そこで、特別支配株主が公正な価格と考えている額の仮払いを認めることで、その部分について、履行遅滞責任を免れることができるようにしたのです。

後日裁判所の決定がなされ、仮払いした金額が裁判所の定めた金額に満たない場合には、特別支配株主は、売渡株主等に対し、その不足額と不足額に対する取得日から支払日まで年6%の割合による利息を支払わなければなりません。

更生会社の適用除外

更生計画において更生会社の特別支配株主が株式等売渡請求にかかる売渡株式等を取得することを定めた場合には、本条の適用がなく、裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができません(会社更生法214条の2)。

条文-会社法第179条の8

(売買価格の決定の申立て)

  • 第179条の8 株式等売渡請求があった場合には、売渡株主等は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる。
  • 2 特別支配株主は、裁判所の決定した売買価格に対する取得日後の年6分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。
  • 3 特別支配株主は、売渡株式等の売買価格の決定があるまでは、売渡株主等に対し、当該特別支配株主が公正な売買価格と認める額を支払うことができる。