売渡株式等の取得の差止請求-会社法第179条の7(新会社法・平成26年改正)

売渡株主による売渡株式等の取得の差止請求

売渡株主は、つぎの場合に不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式等の全部の取得をやめるよう請求することができます。

  • (1)株式売渡請求が法令に違反する場合
  • (2)売渡株主への通知(179条の4第1項1号)・開示書面等の備え置き(179条の5)の規定に違反した場合
  • (3)売渡株主に交付する対価が著しく不当である場合

差止の対象

差止請求で取得の差止を求める対象は、「株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部」です。

したがって、請求をする株主が保有する株式だけでなく、すべての売渡株主が保有する株式が差止の対象となります。

また、売渡株式「等」とされており、新株予約権売渡請求がされているときは、それもあわせて差止の対象となります。新株予約権売渡請求は、株式売渡請求に付随して認められるものなので、株式売渡請求だけが差止められ、新株予約権売渡請求だけが進行するといった事態を避けるためです。

売渡新株予約権者による売渡株式等の取得の差止請求

売渡新株予約権者は、つぎの場合に不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式等の全部の取得をやめるよう請求することができます。

  • (1)新株予約権売渡請求が法令に違反する場合
  • (2)売渡新株予約権者への通知(179条の4第1項1号)・開示書面等の備え置き(179条の5)の規定に違反した場合
  • (3)売渡新株予約権者に交付する対価が著しく不当である場合

売渡新株予約権者の利益を保護するための制度であることから、新株予約権売渡請求に関して法令違反等がなければ、差止請求をすることができません。したがって、株式売渡請求の手続不備を理由に、売渡新株予約権者が差止請求をすることはできません。

差止の対象

差止請求で取得の差止を求める対象は、「株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部」です。
したがって、請求をする新株予約権者が保有する新株予約権だけでなく、すべての売渡新株予約権者が保有する新株予約権と売渡株主が保有する株式が差止の対象となります。

新株予約権だけでなく売渡株式も差止めの対象となるのは、特別支配株主が株式売渡請求の実効性を確保するために新株予約権売渡請求をしているにもかかわらず、新株予約権売渡請求だけが差止められ、実行性が確保されないまま売渡株式の取得だけを強制されないようにするためです。

更生会社の適用除外

更生計画において更生会社の特別支配株主が株式等売渡請求にかかる売渡株式等を取得することを定めた場合には、本条の適用がなく、売渡株主等は差止請求をすることができません(会社更生法214条の2)。

条文-会社法第179条の7

(売渡株式等の取得をやめることの請求)

  • 第179条の7 次に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。
    • 一 株式売渡請求が法令に違反する場合
    • 二 対象会社が第179条の4第1項第1号(売渡株主に対する通知に係る部分に限る。)又は第179条の5の規定に違反した場合
    • 三 第179条の2第1項第2号又は第3号に掲げる事項が対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合
  • 2 次に掲げる場合において、売渡新株予約権者が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡新株予約権者は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。
    • 一 新株予約権売渡請求が法令に違反する場合
    • 二 対象会社が第179条の4第1項第1号(売渡新株予約権者に対する通知に係る部分に限る。)又は第179条の5の規定に違反した場合
    • 三 第179条の2第1項第4号ロ又はハに掲げる事項が対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合