最大判 平成27年3月4日 遺族補償年金の損益相殺的調整

2015年3月5日

判決(決定)の概要・要旨

  • 損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するに当たり、上記の遺族補償年金につき、その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべき。
  • 被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、特段の事情のない限り、不法行為のときに当該損害が填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当であるとした事例。

ひとくちメモ

本判決で変更された判例

本判決で引用されている判例

基本情報

裁判年月日 平成27年3月4日
裁判所 最高裁判所 大法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 本件上告を棄却する。
  • 上告費用は上告人らの負担とする。
担当裁判官 寺田逸郎 櫻井龍子 金築誠志 千葉勝美 白木勇 岡部喜代子 大谷剛彦 大橋正春 山浦善樹 小貫芳信 鬼丸かおる 木内道祥 山本庸幸 山崎敏充 池上政幸
意見
事件番号 平成24年(受)第1478号
事件名 損害賠償請求事件
原審裁判所 東京高等裁判所
原審事件番号 平成23年(ネ)第3957号
原審裁判年月日 平成24年3月22日

最大判平成27年3月4日(裁判所ホームページ)

関係法令等

労働者災害補償保険法

  • 第1条 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。
  • 第9条 年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、支給を受ける権利が消滅した月で終わるものとする。
  • 2 年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。
  • 3 年金たる保険給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれその前月分までを支払う。ただし、支給を受ける権利が消滅した場合におけるその期の年金たる保険給付は、支払期月でない月であつても、支払うものとする。
  • 第16条 遺族補償給付は、遺族補償年金又は遺族補償一時金とする。
  • 第16条の2 遺族補償年金を受けることができる遺族は、労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であつて、労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していたものとする。ただし、妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。)以外の者にあつては、労働者の死亡の当時次の各号に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
    • 一 夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、60歳以上であること。
    • 二 子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること。
    • 三 兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること又は60歳以上であること。
    • 四 前三号の要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、厚生労働省令で定める障害の状態にあること。
  • 2 労働者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、前項の規定の適用については、将来に向かつて、その子は、労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していた子とみなす。
  • 3 遺族補償年金を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とする。
  • 第16条の3 遺族補償年金の額は、別表第一に規定する額とする。
  • 2 遺族補償年金を受ける権利を有する者が2人以上あるときは、遺族補償年金の額は、前項の規定にかかわらず、別表第一に規定する額をその人数で除して得た額とする。
  • 3 遺族補償年金の額の算定の基礎となる遺族の数に増減を生じたときは、その増減を生じた月の翌月から、遺族補償年金の額を改定する。
  • 4 遺族補償年金を受ける権利を有する遺族が妻であり、かつ、当該妻と生計を同じくしている遺族補償年金を受けることができる遺族がない場合において、当該妻が次の各号の一に該当するに至つたときは、その該当するに至つた月の翌月から、遺族補償年金の額を改定する。
    • 一 55歳に達したとき(別表第一の厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く。)。
    • 二  別表第一の厚生労働省令で定める障害の状態になり、又はその事情がなくなつたとき(55歳以上であるときを除く。)。
  • 第16条の4 遺族補償年金を受ける権利は、その権利を有する遺族が次の各号の一に該当するに至つたときは、消滅する。この場合において、同順位者がなくて後順位者があるときは、次順位者に遺族補償年金を支給する。
    • 一 死亡したとき。
    • 二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
    • 三 直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となつたとき。
    • 四 離縁によつて、死亡した労働者との親族関係が終了したとき。
    • 五 子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く。)。
    • 六 第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなつたとき(夫、父母又は祖父母については、労働者の死亡の当時60歳以上であつたとき、子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は労働者の死亡の当時60歳以上であつたときを除く。)。
  • 2 遺族補償年金を受けることができる遺族が前項各号の一に該当するに至つたときは、その者は、遺族補償年金を受けることができる遺族でなくなる。