最三小判 平成27年4月28日 著作権料の包括的徴収方法と独占禁止法の「排除」

2015年7月16日

判決(決定)の概要・要旨

  • JASRACによる包括的な著作権使用料の徴収等は、音楽著作権管理事業の許可制から登録制への移行後も大部分の音楽著作権につき管理の委託を受けているJASRACとの間で包括許諾による利用許諾契約を締結しないことが放送事業者にとっておよそ想定し難い状況の下で、JASRACの管理楽曲の利用許諾に係る放送使用料についてその金額の算定に放送利用割合が反映されない徴収方法を採ることにより、放送事業者が他の管理事業者に放送使用料を支払うとその負担すべき放送使用料の総額が増加するため、楽曲の放送利用における基本的に代替的な性格もあいまって、放送事業者による他の管理事業者の管理楽曲の利用を抑制するものであり、その抑制の範囲がほとんど全ての放送事業者に及び、その継続期間も相当の長期間にわたるものであることなどに照らせば、独占禁止法2条5項でいう「排除」の要件である他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にする効果を有するものというべきであるとされた事例。

基本情報

裁判年月日 平成27年4月28日
裁判所 最高裁判所 第三小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 本件上告を棄却する。
  • 上告費用は上告人の負担とする。
担当裁判官 岡部喜代子 大谷剛彦 大橋正春 木内道祥 山崎敏充
意見
事件番号 平成26年(行ヒ)第75号
事件名 審決取消等請求事件
原審裁判所 東京高等裁判所
原審事件番号 平成24年(行ケ)第8号
原審裁判年月日 平成25年11月1日

最三小判平成27年4月28日(裁判所ホームページ)

関係法令等

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)

  • 第2条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
  • 2~4 (略)
  • 5 この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
  • 6~9 (略)
  • 第3条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

著作権等管理事業法
(定義)

  • 第2条 この法律において「管理委託契約」とは、次に掲げる契約であって、受託者による著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用の許諾に際して委託者(委託者が当該著作物等に係る次に掲げる契約の受託者であるときは、当該契約の委託者。次項において同じ。)が使用料の額を決定することとされているもの以外のものをいう。
    • 一 委託者が受託者に著作権又は著作隣接権(以下「著作権等」という。)を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする信託契約
    • 二 委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の取次ぎ又は代理をさせ、併せて当該取次ぎ又は代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする委任契約
  • 2 この法律において「著作権等管理事業」とは、管理委託契約(委託者が人的関係、資本関係等において受託者と密接な関係を有する者として文部科学省令で定める者であるものを除く。)に基づき著作物等の利用の許諾その他の著作権等の管理を行う行為であって、業として行うものをいう。
  • 3 この法律において「著作権等管理事業者」とは、次条の登録を受けて著作権等管理事業を行う者をいう。

(登録)

  • 第3条 著作権等管理事業を行おうとする者は、文化庁長官の登録を受けなければならない。