最一小判 平成26年6月5日 投資信託の解約金支払請求権と相殺

2014年11月19日

判決(決定)の概要・要旨

  • 再生債務者は、投資信託の解約実行請求をするまで、投資信託委託会社に対する信託受益権を有しており、投資信託受益権に対しては、全ての再生債権者が等しく再生債務者の責任財産としての期待を有している。
  • 再生債務者は、信託受益権につき解約実行請求をすることで、募集販売委託を受けた銀行に対する解約金支払請求権を取得するが、同請求権は信託受益権と実質的には同等の価値を有するものとみることができる。
  • 本件で解約実行請求は、募集販売委託を受けた銀行が再生債務者の支払停止を知った後にされたものであるから、当該銀行において相殺に対する期待があったとしても、それが合理的なものであるとはいい難い。
  • 再生債務者は、信託受益権について、原則として自由に他の振替先口座への振替をすることができ、振替がされた場合には、募集販売委託を受けた銀行が再生債務者に対して解約金の支払債務を負担することはないのであるから、当該銀行が再生債務者に対して解約金返還債務を負担することが確実であったということはできない。
  • 募集販売委託を受けた銀行が再生債務者に対して負担することとなる信託受益権に係る解約金の支払債務を受働債権とする相殺をするためには、他の債権者と同様に、債権者代位権に基づき、再生債務者に代位して信託受益権につき解約実行請求を行うほかない。
  • 本件債務の負担は,民事再生法93条2項2号にいう「支払の停止があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たるとはいえず、相殺は許されない。

基本情報

裁判年月日 平成26年6月5日
裁判所 最高裁判所 第一小法廷
裁判の種類 判決
主文
  • 原判決中,上告人の第2次的請求に関する部分を破棄する。
  • 前項の部分につき,被上告人Yの控訴を棄却する。
  • 上告人のその余の上告を棄却する。
  • 控訴費用及び上告費用は被上告人Yの負担とする。
担当裁判官 山浦善樹 櫻井龍子 金築誠志 横田尤孝 白木勇
意見
事件番号 平成24年(受)第908号
事件名 損害賠償等請求及び独立当事者参加事件
原審裁判所 名古屋高等裁判所
原審事件番号 平成22年(ネ)第1409号
原審裁判年月日 平成24年1月31日

最一小判平成26年6月5日(裁判所ホームページ)

関係法令等

民事再生法
(相殺の禁止)

  • 第93条 再生債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
    • 一 (略)
    • 二 (略)
    • 三 支払の停止があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
    • 四 (略)
  • 2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
    • 一 (略)
    • 二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは再生手続開始の申立て等があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因
    • 三 (略)